2009/07/28

死のロングウォーク






死のロングウォーク/スティーブン・キング



近未来のアメリカ。100人の少年達を集めて
ロングウォークという競技が行われる。

ルールは単純。時速4マイル以上でひたすら
歩き続けること。速度が落ちたり、立ち止ま
ると警告を受け、3回目の警告を受けると射
殺されてしまう。3回ならセーフだが、そこ
で速度を上げなかったりしたら即座に射殺さ
れてしまう。99人の参加者が脱落した後、最
後まで歩き続けた者が優勝する。

優勝者は、どんな願い事も叶えられるという。



あらすじを読んだとき、バトルロワイアルみた
いだなと思った。しかし、明確に異なる点があ
る。それは自由参加ということ。誰かに強制さ
れたわけではなく、自ら望み、出場辞退の猶予
も与えられる。

中には肉親や恋人が病気で苦しんでいるが病院
に連れて行くお金がない、そのお金が欲しいと
いう理由で参加する者もいるようだが、ほとん
どの参加者は「ただ、なんとなく」出場を決め
たのだ。どうして参加するのか自分でもわから
ないまま。

また、それを見守る観客達はまるで箱根駅伝で
も見るように、楽しみ、金を賭け、参加者にヤ
ジとエールを飛ばす。参加者が射殺されるのを
サンドウィッチを頬張りながら家族で見物する。
テレビ中継もされる。


この作品を読むと、どうしようもない後ろめた
さに襲われる。まるで自分がゲームを観戦する
観客の一人になったような気がする。

不条理に強制されたわけでもないこのデスゲー
ムに参加する少年達と、このゲームを許容する
社会に後ろめたくなるのは、作者が現実社会を
トレースしているだけということに気づかされ
るからだと思う。

おすすめです。

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