犬の散歩で近所の公園に行った。ベンチにはお爺さんが
座っていた。我が家の愛犬"ハナ子"は、犬には全く興味
を示さないくせに、人がいるとすり寄っていくのだ。な
にかおやつを貰えると思ってるんじゃないかな。
そんなわけで、僕は秋田犬のハナ子に引っ張られてお爺
さんのところに来た。僕は人見知りなので、知らない人
と上手く話せない。とりあえず「こんばんわ」と言った。
お爺さんも挨拶を返してくれて、「この犬は日本犬だね、
秋田犬じゃないのかな?」と僕に向かって喋った。どう
やら若い頃、秋田犬を飼っていたらしい。
そして、僕にとうとうと喋りだした。秋田犬の話ではな
かった。
この前までお爺さんは犬を飼っていて、この公園に毎日
散歩に来ていたらしい。その犬は、つい1週間ほど前に
死んでしまったのだという。マルチーズで、13歳だった
らしい。
僕は「13年も生きれば、天寿を全うしたんじゃないでし
ょうか」と話した。お爺さんは「みんな、そう言うんだ
よ」と寂しそうだった。「でも、その子の母親は1年前
に死んだんだ」と。
お爺さんは言った。「病気になる前には、その前兆があ
るから注意しなさい」と。
お爺さんはつぶやいた。「寂しくて、つい公園に来てし
まったんだよ」。お爺さんの横にはデカビタCが置いて
あった。