エイミー・トムスンの「緑の少女」という本を読んだ。
未知の惑星に降り立った人類の調査クルー"ジュナ"は、
その惑星の生態系にアレルギー反応を起こし死にかけ
ていた。その星の住人たちはそんな彼女を助け、生態
系に馴染めるように肉体改造をおこなった。
腕には針状の突起物が生え、髪は抜け落ちた。さらに
感情の起伏により体の色が変化するカメレオン人間に
なってしまったのだ。
こうして主人公ジュナは、異星人たちと暮らし始める
のだが・・・。
この小説は、人類とエイリアンとのファーストコンタ
クトを描いているわけだけれども、宇宙人が地球に侵
略にきたとか、宇宙には人類をはるかにしのぐ叡智が
みたいなSFではないのです。
例えるなら、西洋人がはじめて日本にきてワビサビの
精神世界に触れました的なお話なのです。
人類からみても、異星人からみてもお互いがひどく野
蛮なわけ。「げげっ、こいつら自分の子供を喰っちゃ
のかよ」と人類が思えば、「うげっ、こいつら同じ人
間同士なのに殺し合いするのかよ」って異星人は思う。
最初は、主人公と異星人の文化の差異がクローズアッ
プされていて、思わずジュナ頑張れ!って人類側を応
援しちゃうんだけど、読み続けていくと異星人側の文
化、考え方に主人公も読者(僕)もどんどん感化され
ていくわけです。後半は、人類側の文化、考え方に自
然に違和感を持つまでになる。
作者のストーリー構成力が見事としか言えない。
異星人側に、「伝統や習慣に閉じこもると、その文化
は衰退する」みたいなことをと言わせてしまうあたり
は、やっぱ作者は西洋人だなーとか思ってしまうわけ
ですが。
とにかくこの本は爽やか。まるでタンポポの綿毛に頬
をくすぐられてるみたいに。読後の清々しさってたら
ないね。女性作家らしい緻密な心理描写も魅力。さり
げなくジャンダー理論が展開されてるあたりも、女性
作家ならではの魅力かな。
アーシュラ・K・ル・グィンとジェイムズ・ティプトリ
ー・ジュニアを足して2で割った感じ。
邦題、表紙絵ともにこの本の魅力を損なってると思うよ。
主人公は少女じゃなく大人の女性だし、カメレオン人間
なんだから。
それに、解説も非常に読みにくい。本章がとても読みや
すいのに、解説が読みにくくてどうする。これじゃ解説
になっていない。というか、解説者の自慢話。
爽やかなSFを読んでみたい人には、絶対オススメ。
*
酔っぱらって書いた感想文があまりに酷かったため、大
幅に訂正・加筆いたしました。酒は怖い。
あと、作中にカメレオン人間という記述はありません。
僕が勝ってにそう思っただけです。
2009-09-30
同作家のデビュー作「ヴァーチャル・ガール」もオススメ。
こちらはデブで不潔なオタクが、自分専用の美少女恋人ロ
ボットを作っちゃうというストーリー。
そんな内容なのに、こちらも爽やか。